新エアマットレスの開発とステージIII以上の重度褥瘡保有患者への適合症例

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中條は、長期療養病棟を保有する青葉病院で長年に亘って褥瘡の治療及びケアに従事して来た。名誉院長である現在も褥瘡に関する診療を継続中である。
これまで重度褥瘡保有患者(NPIAP分類ステージIII以上の治療及びケアに関しては、日本褥瘡学会のガイドライン第3版において高齢者の褥瘡予防に適していると推奨されている「圧切替式エアマットレス」を主たる体圧分散寝具 (Support Surface Surface) として使用し、30度以下の体位変換も合わせて実施しながらケアに当たってきた。しかし、現在適切とされているそれらの褥瘡ケアをガイドラインに沿って実施したにも拘わらず、創が遷延して改善傾向が見られない症例が散見され、抜本的対策の必要性を感じていた。日本褥瘡学会のガイドラインによると、重度褥瘡に対しては空気流動ベッドと Low Air Loss ベッドが推奨されている (推奨A)。しかし長期療養型病棟等では、そのような治療用機器の配備は普及しておらず、経済的にも対応可能な範囲で補助用具を選択し使用されているのが現状である。
中條の治療経験では、重度褥瘡保有患者においてはポケットを保有するケースが約25%みられ、その対処方法に関しては、各専門医から異なった見解が示されている。中條はこれまで処置した多くの症例から、ポケットは難治ではあるものの深部組織圧迫損傷いわゆるDTI (Deep Tissue Injury) の損傷からの治癒過程であると考えており、保存的療法を採用している。その上で、治癒過程にあるポケットの治癒が促進しないのは、褥瘡創底部を構成する骨組織直下の軟組織に対する外部からの圧迫が十分解決されていないことが原因のひとつではないかと考えた。そこで、骨突出部の組織内荷重管理 (Tissue load Management) を実現する方法の一つとして、米国褥瘡諮問委員会NPIAP (National Pressure Injury Advisory Panel) が2007年にSupport Surfaces の機能の新たな定義として提唱した「圧の再分配 (Pressure Redistribution)」を実現する新しいエアマットレスを開発し、実際にステージIII以上の難治性褥瘡を保有する患者に使用し、褥瘡の治癒過程に影響を示すかを検証した。
NPIAPは、圧の再分配を実現する方法として immersion & envelopment (沈み込みと包み込み) という機能を定義している。新しく開発したエアマットレスは、臀部や踵などの骨突出部を適切に沈み込ませ包み込むという部位別の浸漬機能を持ち、また、臀部 (骨盤部) に集中する荷重を臀部以外の部位に再分配する機能を持つことを特徴としている。この新型エアマットレスは、レインボー&アイ株式会社と開発した静止型のエアマットレスである。(以下N マットレスと言う。)

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