床ずれ発生部位と病的所見との関係

[公開日] 2014年09月28日

床ずれ発生リスクを高める病的所見/徴候のうち、下肢動脈損傷、寝たきり、廃用萎縮の3つを取り上げ、床ずれ発生部位に特長があるかを調べてみました。

下肢動脈の閉塞や高度の狭窄は、下肢の壊疽を発生する原因となります。しかし、副血行路が発達すると、足背動脈が触知できない状況でも、壊疽が発生しないで済むことが少なくありません。しかし足の循環が不良であるために、僅かな圧迫でも床ずれが発生しやすくなります。また、下肢動脈の狭窄/閉塞がある状態では、他の部位の循環も不良であることが多くなります。

足背動脈は、他の体表部位の動脈より、一般的に狭窄や閉塞による循環障害が起こりやすい動脈です。従って、足背動脈の触知所見は、全身の動脈の病変を早く推測するのに役立つと同時に、循環障害が関係して発生する床ずれについても、発生率を高くすることが予想されます。

自験例で足背動脈の触知所見を正確に記録した887例を分析した結果を図1、図2に示します。

図1では、足背動脈の触知所見により、両側触知困難263例、片側触知困難128例、両側弱く触知47例、片側強く他側弱く触知47例、両側強く触知276例の群に分け、各々の群で褥瘡発生部位数の平均値を図示しています。

両側触知困難群の発生部位数が最も高くなっています。つまり、両足背動脈が触知困難な場合は、他の体部の循環も障害されている可能性が高いことを示唆していると考えます。

足背動脈触知所見と褥瘡発生部位数
図1 足背動脈触知所見と褥瘡発生部位数

図1で用いた症例のうち、両側の足背動脈が触知困難な群263例、両側が弱く触知する群47例、両側が強く触知する群276例を使用し、床ずれ発生部位別に床ずれ発生率を出し、足背動脈の触知所見と、床ずれ発生部位との関係を図2に図示しました。脈拍がしっかりと触れる方、微弱であるが触知できる方、全く触知できない方の3群に分け、各部位毎の床ずれ発生率の有意差を推計学的に調べました。カイ二乗検定を用いて、床ずれの発生有無と、両側足背動脈触知所見との関係性を調べました。

下肢動脈の循環が直接影響する下腿、踵、足趾については、足背動脈が触知できない方で多く発生する傾向が見られました。特に踵と足趾については統計的有意差が見られました (踵: χ^2(2)=16.8, p=0.0002; 足趾: χ^2(2)=23.4, p<0.0001)。これら2ヵ所以外の部位については、足背動脈の触知の状態による発生率に有意差はありませんでした。

足背動脈触知程度
図2 足背動脈触知程度による床ずれ発生率の特徴

 

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